まずはお手本を聴くべき?

新しい曲に取り組む時

ピアノのレッスンに通っていると、自分の知っている曲だけでなく、全く知らない曲を練習することもありますよね。

そんな時、まずは何から取り組めば良いのでしょうか?

 

最近ではインターネットを使って検索すれば、様々な曲の演奏動画を見ることができます。

ですから、最初にそれらを参考にしている方も多いのでは無いでしょうか。

けれども、私はまずは自分で楽譜を読む方が良いと考えています。

ピアノで音を出す前に、音楽をイメージするのです。

小さなお子さんの場合や、初心者の方は、そんなの難しくてできない!と思われるかもしれませんが、

同じ形の音楽が繰り返されているな、と気が付いたり、ここから調号が変わっているな、などと気が付くことくらいなら出来るのでは無いでしょうか。

そして、自分で実際に音を出してみたり、歌ってみたりします。

もちろん、最初からスラスラ弾けないことの方が多いと思います。

けれども、楽譜を少しずつ読んで行き、自分なりのイメージを作りあげていく作業はとても大切ですし、自分なりの表現力を養うためにも必要な作業だと考えています。

演奏動画を最初に見てはいけない理由

自分で楽譜を読んだり、イメージを膨らませたりすることは大切だけど、最初に参考程度に演奏動画を検索して、視聴してから練習した方が最短で弾けるようになるのでは無いか、と考えていらっしゃる方も多いことでしょう。けれども、私はそれはとても危険だと思います。その理由は2つあります。

 

まず1番目は「正しい演奏をしているとは限らないから」

インターネットで検索して出てくる演奏動画は、一体誰が演奏しているのでしょうか?

もちろん、プロのピアニストが演奏している場合のものもありますが、どこの誰が演奏している動画なのか分からないものも少なくありません。それらは、本当に正しく演奏していて、お手本になるとは言えないこともあります。

例えば、使っている楽譜の出版社が違えば、解釈が違うこともあり、自分が使っている楽譜と違う箇所があるかもしれません。

また、演奏動画をアップロードした人は、練習中の曲だけど、うまく弾けたから大勢の人に見てもらいたい、と思っていたけれど、音の弾き間違いや、リズムの間違いが無いとは限りません。音楽的にも素晴らしいとは言えないかもしれません。それらの判断がご自分で出来ないのであれば、検索して出てくる演奏動画を見て安易に練習の参考にすべきでは無いからです。

 

2番目は自分で考える力が養えないから」

プロの演奏を聴けば、もちろんお手本になります。けれども、あまり聴き過ぎると、全く同じように弾くことを目標にしてしまい、自分でどのように演奏したいのかを考えられなくなる恐れがあります。

同じ楽譜を使っていたとしても、人それぞれ演奏の仕方は違いますし、感じ方も違います。

自分なりにどのように演奏したいのかを考えていく力は小さいお子様の場合、特に大切にしなくてはならないと思います。

例えば、どうしても学校の合唱で伴奏を弾くことになったけれど、仕上げなくてはならない日が迫っていて、音楽全体を知ってから練習したい、という場合などは、範奏を聴いて練習することも大切です。

また、大体仕上がってきたけれど、どうしてもどのように弾いたら良いのか分からない時には範奏を聴くことで参考にできることもあると思います。

けれども、この時気をつけなければならないのは、プロがきっちり演奏しているものを聴くということです。

演奏動画にしても、CDにしても、プロの人が演奏しているものを聴くようにしましょう。

ですが、プロの演奏であっても、そのピアニストのカラーが強く、個性的過ぎていて、

鑑賞するには良いけれど、お手本にはならない、ということもあります。

ですから、何人かの演奏を聴いて、自分の求める演奏に近い人のものを参考にしたり、先生に相談してみることをオススメします。

 

初心者のお子様には、最初に範奏は示しません。

どうしても、この日までに弾けるようにしなくてはいけないのに、どんな曲か分からないから練習が進まない!

というような場合を除いて、当教室では最初にお手本は示していません。

特に、初心者のお子様には最初にどんな曲なのか、お手本を弾いて聴かせるようなレッスンはしていません。

なぜなら、自分で楽譜を読む力が育たないからです。

音が少ないうちに、リズムが簡単なうちに、自分で楽譜を読む力をつけておかないと、難しい曲になった時に困ってしまいます。

短い曲で、音も少なければ、先生がお手本を弾いているのを何回か見たり聴いたりすれば、簡単に弾けるようになります。

もちろん、そのような練習も無駄ではありませんが、全ての練習曲でお手本を頼りに練習するクセがついてしまうと、耳で聞いただけでは覚えられないリズムや長い曲を練習する時に自分で練習できなくなってしまいます。

実際、以前、他のお教室から「楽譜が読めないので、練習できません。上手になりたいです。」とおっしゃって入会された方から聞いたのですが、いつも先生がお手本を弾いて、それをマネしながら弾いていたから、バイエルを終えるくらいのレベルの本を使っていたにも関わらず、音符がほとんど読めず、リズムも分からない、という方がいらっしゃいました。

こんなことにならないためにも、自分で楽譜を読むことができるように練習していって欲しいと考えています。