レッスンで心掛けていること

ピアノのレッスンに通って頂くにあたり、ずっと心掛けていることがあります。

それは、最終的には自分の力で、好きな曲をピアノで弾くことができるようになって頂きたい

ということです。

 

そのためには、楽譜を読む力が必要です。

何の音なのか、どんなリズムなのか、書かれている音楽記号の意味は何なのか、

それらを自分で判断できるようになって頂きたいと考えています。

特に、小さなお子さんの場合、大人になっても「趣味はピアノです」

と言えるくらいのレベルになって欲しいな、と思っています。

 

楽譜を読めるようになるには、少しずつ慣れていくしかありません。

もちろん、音符にド、レ、ミ、と書き込んでいけば、すぐに音が分かりますし、

簡単に弾くことができるようになります。

けれども、それは上達の近道のように思えて、遠回りだと考えています。

音に”フリガナ”を書いてしまうと、どうしてもそちらばかりを見てしまうからです。

ですから、全ての音に”フリガナ”を書いて、とにかくピアノが弾ければ良い、

というレッスンはしておりません。

 

また、ピアノのレッスンを通して、自分で考える力を伸ばして欲しいと思っています。

音の出し方や、音の強さなど、教えてもらった通りに弾くだけではなく、

どのように弾きたいのか、何を表現したいのか、

自分で考えることができるようになって頂きたいのです。

 

「ピアノが上手」というと、難しい曲を弾くことができる、とか、

とても速い曲を弾くことができる、などを連想される方が多いと思います。

もちろん、それらもピアノが上手であることに含まれるのですが、

私はピアノを弾く人が自分の思いを表現できることが、

ピアノが上手な条件として必須だと思うのです。

そして、自分の思い描いた演奏が出来た時、ピアノを弾く喜びや楽しさを感じることができ、

「ピアノが上手に弾けた」と言えるのでは無いかと思っています。

それは、大人だけでは無く、子どもにも味わって欲しい感覚なのです。

 

私はレッスン中に「ここは、こんな風に弾いて」という指示もしますが、

「ここは、どんな風に弾けば良いと思う?」というような質問もするように心掛けています。

曲のタイトルから、その曲のイメージを自分なりに膨らませて、

そのフレーズで、その音で、何を表現したいのかを考えて欲しいからです。

 

 

指導者は多くを語って、どんどん教えていくべきものだと漠然と考えていた時もありました。

けれども、そうでは無いことを知ったエピソードをご紹介致します。

私は大阪芸術大学卒業時に中学・高校の音楽科教員免許を取得していたので、

卒業後は自宅でピアノ教室をしながら、学校で授業もしていました。

けれども、もっと教育について学びたいと考えるようになり、

小学校教諭の免許も取得するため、働きながら再び大学生になりました。

そして、通信教育とスクーリングでの学習を経て、2週間お休みを頂いて、

再び教育実習に行くことになったのです。

実際に教壇に立ち、先生として授業をしていた経験は積んでいたので、

いつも通りに授業をしていました。

小学校の免許を取得するためには、もちろん、音楽以外の授業もしなくてはいけないのですが、

それほど難しいことでは無いと考えていたのです。

けれども、担当教官から言われたのが「先生、喋り過ぎてる」だったのです。

「本当に良い授業というのは、先生よりも、子どもが発言している授業だよ」と。

それから、いかに喋り過ぎずに、子どもに考えて発言させるかを大切にするようになりました。

「これって、どうしてだと思う?」「こうだったら、どうなるかな?」と、投げかけ、

私が全て説明せずに、考える余地を与えるようにすると、

本当に子ども達は様々なことを考えて発言するようになったのです。

その時は社会科の授業をしたのですが、自分が喋り過ぎないようにするために、

事前の準備はとても増え、大変だったのですが、有意義な授業になりました。

そして、指導者とは、一方的に知識を伝えるだけではダメだということを学んだのです。

これって、授業だけでなく、子育てやピアノレッスンにも大切なことだと感じています。

我が子にもできるだけ、何事においても自分で考えさせる余裕を持ちたい!と思っています。

(実際は、つい、口うるさく言ってしまうことが多々あるのですが・・・)

 

また、ピアノのレッスンは楽しいのが一番です。

これは、大切なことだと思っています。

どんどん曲が合格して、先に進んでいくからこそ楽しい。

もちろん、その通りです。

 

「うちの子は、別にピアニストにしたい訳じゃないから、

だいたい出来れば合格にして、新しい曲に進めて欲しい」

 

「お友達はもう、あんな難しい曲を弾いているから、

うちも、もっと難しい曲を練習させて欲しい」

 

そういう思い、すごく良く分かります。

 

けれども、私にはできません。

 

基本は何事においても大切です。

上に積みあげていくためには、しっかりとした土台が必要だからです。

ピアニストになるかどうか、というのとは全く違う話なのです。

基本が出来ていないと、絶対にすぐに行き詰ってしまいます。

また、ピアノは誰かと競うためのものではありません。

もちろん、お友達や、同じくらいのピアノ歴の人が

自分のお子さんよりも、レベルの高い曲を弾いていれば、

心がざわつくことがあると思います。

そんなお友達を目標にしたり、ライバルにするのは良いですが、

必要以上に競争心を燃やすのはオススメできません。

お子さんは折角楽しくピアノを弾いているのに、

お友達と比べられてばかりでは、楽しく無くなってしまいます。

何でもそうですが、個人差があるのは当然です。

ピアノに関しては、練習環境で大きく変わってきます。

ですから、自分のペースで楽しくレッスンを続けて頂ければ、と思っています。