大人がピアノを始める切っ掛け

ピアノは子どもだけが習うものでは有りません。

大人が初心者でも全く構わないのです。

最近では中高年の初心者の方も増えてきています。

 

 

子どもがピアノを習っていて、母親も一緒に習い始めるパターン

「自宅にピアノがあるんだし、お子さんが学校に行っている間、

ピアノは誰も弾かないのだから始めてみられてはいかがですか?」

と声をかけると、意外と「やってみようかしら」と始める方がいらっしゃいます。

子どもの頃に少し習っていたけど、もう何十年も弾いていないので、

楽譜を読むのもギリギリな方、

全くの初心者だけれど、子どもがピアノを弾いているのを見てきたので、

何となくどうすれば良いか知っているので挑戦してみたい方。

主婦は意外と毎日忙しく、子どもが幼稚園や学校に行っている間にピアノの練習をしようと思っても、

家事をしている間に子どもが帰ってくる時間になってしまって、出来ない、ということがあります。

 

こんな時は、練習カレンダーを親子で共有してはいかがでしょうか?

お子さんが練習をした日に○をつけたり、シールを貼ったりするのを提案して、

「お母さんも練習した日に印をつけるから、今月はどっちがたくさん練習したか競争よ!」

と言えば、お互いに練習をさぼれないようになります。

また、簡単な連弾曲を用意して、「今月はこの曲を二人で弾けるようにしよう!」と決めて練習すると、

目標ができて、練習に取り組みやすくなります。

親子で一緒に楽譜を選ぶ楽しみもでき、一石二鳥だと言えるでしょう。

 

昔、習っていたけれど、すぐに辞めてしまったパターン

女の子に人気の習いごとと言えば、やはりピアノです。

けれども、中学校入学頃に辞めてしまう方が多いようです。

理由は”勉強が難しくなってくるので、塾に通い始めて、練習時間が取れないから”

”クラブ活動で遅くまで学校にいて、休日も練習に行かなくてはならないから練習の時間を取れないので”等です。

しかし、これはだんだん難しくなってきて、思うように弾けない壁を感じて言い訳をして辞めていったり、

親が学業優先にしたいので、何となくピアノを弾けるようになったから、

この辺りでピアノを辞めさせて勉強に力を入れて欲しい、という願いから辞めてしまった方です。

 

そういう方は子どもの頃の楽譜があれば、是非それを活用するようにしてください。

ちょっと簡単過ぎるかな、と思うような小さい頃に弾いていた曲でも、

長い間ピアノを弾いていないと忘れてしまっているものです。

4小節くらいの初心者向けの楽譜で音符の読み方を思い出してみては如何でしょうか。

これが簡単にできるようになったら、ピアノの弾き方を忘れかけている指と脳を起こす為に

ハノンを活用してみるのがオススメです。

指の体操のような曲ばかりで楽しくない思い出があるかもしれませんが、

運動前の準備体操だと思って1日1曲練習してください。

今日が1日なら1番。10日なら10番、というように決めておくと良いでしょう。

バリエーションとして、音を短く切って弾くスタッカートで練習してみたり、

スキップのリズムのような付点のリズムで練習してみたりしてみてください。

全音楽譜出版のハノンですと、巻頭にバリエーション例が載っているので、

それを参考にして練習すると、スムーズに指が動かせるようになります。

ただ、大人の方が何時間もピアノの練習に費やすのは難しいと思いますので

(できるのなら、それに越したことはありませんが)

毎日どのように練習するのか時間配分を決めると良いでしょう。

「今日は仕事で遅くなってしまったから寝る前に30分だけ練習しよう」

という時は、指の準備体操曲練習(ハノン等)10分、

練習中の曲15分、スラスラ弾けてお気に入りの曲5分、という具合です。

 

自分が思っているほどの練習成果が得られなくても、

時間になったら次の練習曲へ移るようにして下さい。

そして、最後にはご自分が得意とする曲を弾いて終わるのを忘れないで下さい。

練習をスラスラ弾ける曲を弾いて終わるのと、

間違えて止まってばかりの曲を弾いて終わるのとでは、気分が違うはずです。

また、弾ける曲を何週間も何か月も弾かないと、”弾けない曲”へと変化していってしまいます。

弾ける曲がどんどん弾けない曲に変わっていくのを防ぐためにも、

ご自身のレパートリーとして貯金していくようにして下さい。

 

お仕事を退職した、または老化防止のために始めるパターン

”ピアノを弾くと頭が良くなる”

”指を全てバラバラに動かすから頭の体操になって、老化防止になる”

というのはよく聞く話です。

実際、ピアノは頭を使います。

指をバラバラに動かさなくてはならないし、目では自分が今弾いているより少し先を見て、

次の音を弾く心づもりをしなければならないのですから。

 

お仕事を退職されて、とくに趣味が無い場合、ピアノは良い暇つぶしになると言えるでしょう。

しかも、弾けたら恰好が良いし自慢できるという特典までついてくるのです。

音楽の授業でリコーダーを吹いたことくらいしか、音楽実技経験が無い、

という大人の方が独学でピアノを弾けるようになるためには

かなりの努力が無いと難しいようです。

独学が無理だと思われたら、迷わずピアノ教室へ通うことをお勧めします。

いい大人が全くピアノが弾けないのに習いたいなんて、

恥ずかしいと思うことはありません。

そういう生徒さんは増えていますので、

初心者仲間が増えることも十分考えられます。

 

ただ、注意しなければならないことがあります。

それは、子どものように体で覚えられないということです。

”子どもの頃は1年でこれくらい進んだから”

”うちの子ども、毎日練習できている訳じゃないけれど、有名な曲も弾けるようになったし”

と、子どもと同じように考えてはいけません。

手の関節も硬くなってきますし、筋肉も衰えていきます。

集中力だって、中学生や高校生と同じという訳にはいきません。

子どもの頃は補助輪無しの自転車の練習を少しすれば乗れるようになりますよね。

でも、大人の場合はどうでしょうか?

子どもと同じようにはいきません。子どもは何となく感覚で会得していく部分が多いですが、

いつの頃からか、大人は頭で考えて、

頭で分かっていても体がついてこないという状態になっていきます。

これはピアノに限ったことではありません。

(私も最近、こういうことをひしひしと感じています・・・)

 

ですから、思っている通りに弾けなくても焦ったり、

不安になったりしないで頂きたいと思います。

大人はそういうものです。

少しずつ、ご自分のペースで楽しむつもりで始めて頂きたいです。

その為には、弾きたい曲、憧れの曲を持つことです。

ショパンやリストの曲は素敵だけど、難しいので、高望みだと思われるかもしれませんが、

初心者でも簡単に弾けるように曲をアレンジした楽譜がたくさん販売されています。

しかも、オリジナルでは長い曲だけれど、

こちらはサビの部分を中心にして、サワリの部分は割愛されています。

なので、弾きたい所がうまくまとまっていて、目標としてはもってこいです。

ただ、練習法に注意しなければいつまでたっても弾けるようにはなりません。

「今日は1段目を弾けるように練習しよう」と決めて、

1段目が大体弾けるようになったので今日の練習は終わりにしたとします。

次の日。もしくは数日後。

「今日は2段目が弾けるようにするぞ!では、最初から弾いてみるとしよう」と弾き始めます。

不思議なことに、1段目が前回のようにスラスラ弾けないではありませんか。

で、結局今日も1段目の練習で終わり。

という日々が数日続くと、曲が全く弾けるようになってこないので嫌になる可能性があります。

「今日は2段目の練習」と決めたなら、まず2段目から練習してください。

そして、2段目ができるようになっていたら、1段目から通して弾いてみるようにしましょう。

3段目以降を練習する時も同じです。

通して弾いてみて、つまってしまう所だけを集中して練習すれば良いのです。

もし、1日の練習で目標とする1段ができないのであれば、

2日、3日、とご自分で練習する日数を決めてもよいかもしれません。

1か月で1曲弾けるようにしようとするならば、練習を始める前に、

弾こうとする曲の小節( 楽曲の拍子に基づいて、譜面の上で縦線と縦線とで区切られた部分)

の数を練習日数で割ってスケジュールを決めるのも良いでしょう。

曲には同じようなフレーズが繰り返し使われていることもありますから、

前半が大体弾ければ、後半は簡単に弾けるようになるということがよくありますから

コツコツ練習するように心がけて下さい。

 

 

大人になって、新しいことを始めるというのは

少し勇気がいることかもしれません。

でも、自分にできることが増えたら、純粋に楽しいですし、

新しい世界が見えてくるのでは無いでしょうか。